2-1. 独り言のバリエーション キャラクター作り
自分自身に対する独り言 主人公キャラ
誰に対して独り言をつぶやいているかという対象に関してですが、自分自身に対して独り言を発することがもっとも多いと思います。心の中や声に出して自分に向けて言葉を一人で発しています。引きこもりライフを送っていなくても、人と話すよりも自分で自分に話しかけていることのほうが多い人もいるだろうと思います。それほど多くの時間を対自分の独り言に費やしているのですから、それを今よりもほんの少しだけ有意義なものにできれば、それだけで随分と生活自体が変わってしまう可能性があります。
ということで、対自分の独り言で一体、自分はどんな自分に向けて一人で話しかけているのかを先ず見てみます。時間という観点からこれを見てみると、昔の自分、今の自分、未来の自分、架空の自分と対自の対象が分かれてくると思います。架空の自分は、無時間ということになるでしょうか。
昔の自分が独り言に現れ出て、独り言内で対話のようなことをするときがあると思います。何か昔の記憶や思い出を呼び起こす匂いや音や味などが引き金になって出現して一人でぶつぶつと過去の自分に話しかけてしまいます。というよりも話しかけている意識すらない感じで、昔の自分もはっきりとした輪郭もない曖昧なものとして一人で言葉を発しています。あの独り言は過去の自分に向けてのものだった、と後で思い返してみて初めて気づくということがあります。
そんな曖昧模糊な過去の自分に向けてではなくて、今、現在の自分に語る独り言のほうが数としては圧倒的に多いかもしれません。それでも、独り言ですから、今の自分に話しかけているとしても、もう一人の今の自分の姿をしっかりと認めて対話のようにつぶやくことは少ないのではないかと思います。今、感じていることや思っていることや不安や心配事などを一人で自分に話していても、そこは独り言ですから、もう一人の今の自分などという他者のようなものも存在しないかもしれません。となると、もし自分に向けてでないなら一体、誰に向けて独り言を発しているのだと不思議な気持ちになってきます。でも、自分に言い聞かせるように一人で話していますから、今の自分に対してつぶやいているはずです。今の自分は独り言を発しているその時の自分ですから、何も意識せずともほぼ自然に何の疑いもなく今の自分には一人で気軽に話しかけられるのだろうと考えています。
そうなってくると、未来の自分に向けてのほうがまだはっきりとしているかもしれません。未来の自分ですから、実際は一度も現実に存在したことはない想像上のものでしかありませんが、そのほうが今の自分よりリアルに感じるというのは変に感じます。でも、不安や心配や焦りを感じる時、過去でも現在でもなくて、未来や将来に対して感じることが圧倒的に多いと思いますし、そのほうがリアルに実感できるわけですから、独り言でも未来の自分に向けてのほうがより現実的に感じるのかもしれません。
あと、無時間的な自分、架空の自分に向けて独り言を発していることもあるだろうと思います。自分で作り上げた自己像というのがあって、もうそれは時間がどう経過しようが変化することがないような自己イメージで、その固定された架空の自分に向けて一人で声をかけることがあります。でも、定まった自己像ではありますが、あまり意識せずに作り上げていることもあり、この架空の自分をはっきりと認識して独り言を発することは少ないのではないかと思います。
対自の独り言として、過去の自分、今の自分、未来の自分、架空の自分というのを少し見てきましたが、これらの自分に向けての独り言も人と話す行為の一形態として使っていきます。人との対話レベルにまで対自の独り言を持って行くためには、これらの自己イメージをもっとはっきりさせる必要があります。人との会話では、実際に目の前に具体的な他者が輪郭を持って存在しています。その目の前にいる他者と話しをするのが人との対話ですから、その代わりを一人語りの独り言で試してみるには対自のイメージを先ずはしっかりと掴むことが大切になってきます。
過去の自分ですが、これは実際に存在した自分であり、すでにある程度、自己像が見えています。この像をさらに肉付けしていくために、過去の自分の写真をチェックしたり、音声や動画があればそれも確認してみます。また、過去の自分が今に残している日記や絵や作文や教科書などもどこかにしまっていないかと部屋の中を探してみます。そのように独り言に出てくる過去の自分をしっかりと見つめながら、どんどん肉付けしていきます。先ずは過去の自己像の中の一つをはっきりとさせて、その後、また別の過去の自己イメージを固めていきます。対話の対象にする時に自己像は多いほうが良いですから、たくさんの過去の自分を具体的に作り上げていきます。
資料が残っている過去の自分作りができたら、今度は今の自分に取り掛かります。今の自分に話しかける独り言は数は多いですが、対象としてはっきりと今の自分を掴めてはいないだろうと思います。ですので、もう一人の今の自分を作り出してみます。でも、それほど難しいものではなくて、現実に今、存在している自分自身を元にもう一人の今の自分を把握してみます。主観的というよりはなるべく客観的に見た自分をもう一人の今の自分として登場させてみます。キャラクター化するようにイラストを描いても良いだろうし、アニメやゲームなどの登場人物のようにキャラ設定として性格、特技、好きなもの、嫌いなものを書き記していっても面白いだろうと思います。
次は、未来の自分作りです。不安や心配事、あるいは願望や期待が中心の独り言の場合、未来の自分がメインの登場人物になってきます。この未来の自分もはっきりとイメージできていないかもしれません。その状況から具体的な未来の自己像を得るために、不安や悩みで押しつぶされそうな気弱な未来の自己像、それと期待や望みに満ち溢れた強気な未来の自己像の最低二つは作り上げてみます。これらもキャラ化してイラストを描いてみれば楽しいだろうと思います。
最後は、無時間的な架空の自分ですが、これは自分が頭の中ですでに作り上げてしまっている自己イメージですので、それをさらに肉付けしていけば良いと思います。行なう作業は、ほぼ固定されてしまっている自己像の具体化になります。でも、その定まった自己像を掴むのがなかなか難しいようなら、まずは自分の体のイメージを掴んでみれば良いと思います。誰もが肉体を有していますが、頭の中で考える自分のボディイメージと現実の自分の体は異なります。自分はどのように自分の体をイメージしているのかを思い浮かべながら架空の自分を思い描いてみます。
ここまで様々な対自の自己像を具体的に得ようとしていますが、頭の中で考えるだけでなく、実際に文字で書いたり、イラストを描いたりと目に見える形で残しておきます。あくまでも人との対話の代わりのように独り言を利用するためにやっていますので、対象が曖昧なままだと役に立ちません。この対自の独り言の自分が、メインキャラになってきます。主役が立たないと話しも面白くありませんから、しっかりと作り上げていきます。
人に対する独り言 敵役、悪役、脇役
次は対人の独り言を見ていきます。ある具体的な他者を相手に独り言を発する時があります。その時の他者のイメージを探っていって、はっきりとした輪郭を持ったキャラクターに仕上げていきます。
先ずはどんな人が自分の独り言に現れ出てくるか確認してみます。自分以外で独り言内に登場する人物を探ります。人によってどんな他者が独り言に現れてくるかは様々だと思いますが、何か自分の中で引っ掛かりがある人物ではあるはずです。親や親類、学校の先生や同級生、近隣住民、よく行くコンビニの店員などを対人の独り言の対象にしていることが多いのではないかと思っています。
その中でも親に向けての独り言は誰しもが発していると思います。また、自分の人生で重要だったと考える出来事に関係がある人物も対人の独り言の対象としてよく登場してくると考えています。それは、学校内で起きたある出来事に関係することであるかもしれませんし、そうならば、そのことに関わった学校の先生や同級生などが対人の独り言の他者として現れ出てくると思います。また、何か隣近所で起こった問題が強く心に残っているのなら、その場に居合わせた近隣住民などが独り言内の他者となってきます。
そのような自分の独り言に現れる人物をよく観察してみます。強烈に心に傷跡のようにこれからもずっと残るだろう出来事だと感情に引きずられすぎて誰に対して独り言を発しているのか、もはや分からない可能性がありますが、それでも根気強く対象者を見定めてみます。そして、その取り出した独り言内の他者の輪郭をはっきりとさせていきます。どうしても自分の頭の中で作り上げた他者像ですから、いろいろと自分勝手にデフォルメしたものではありますが、そこはあまり気にせずに具体的に作り上げてみます。対自の独り言の自己像作りの時のように過去の写真を持ち出してみたり、イラストを描いてみたりして掴んでみます。実在の人物ですから、全くイメージを掴めないということはないだろうと思います。
その人物たちがネガティブな感情と結びつきすぎている場合は、その姿をイメージして形作りたくないと感じるかもしれませんが、その人物たちは、対自の独り言の自分がメインキャラだとすると、重要なサブキャラになってきます。ある場合には、主人公と同等に重要である悪役、あるいは、ラスボスになってくるかもしれません。敵役がしっかりと立っていないとメインキャラもキャラ立ちしません。マイナスの感情を引き起こす負のキャラクターも必要不可欠ですから、具体的に丁寧にキャラ設定をしていきます。それでも、あくまでキャラクターとして形作っていくだけですから、生真面目になりすぎずに、どんな悪役や敵役がいたら盛り上がるだろうか、と考えるように作り上げてみます。
そして、独り言内に登場する他者の肉付けが出来たら、その人物たちの過去、現在、未来の像も想像して作り出してしまいます。独り言の対象のバリエーションが多いほど、人との対話の一形態として独り言を利用していく際のストックが豊富にあるということになります。キャラクターとして登場できる人や物が多いほど豊かな独り言ライフが送れますので、楽しみながらキャラ作りに取り組んでみます。
親が独り言内に他者として登場するとして、その親はどんな姿をしているでしょうか。そのイメージは、ここまででもう掴んでキャラクター化できていると思います。その独り言内に現れる他者のキャラ化した像を頼りに、その人たちの過去、現在、未来のイメージも作り上げてしまいます。独り言内の親像をもとに過去の親、現在の親、未来の親というものを形作っていきます。過去の親像は、自分が生まれる前の親の姿をイメージしてみるのが良いかもしれません。写真などがあれば、それを手掛かりにして想像してみます。
また、学校の同級生が独り言内に他者として現れるなら、その人の幼少期、現在、将来の姿をキャラクター化してしまいます。そうすることで、学校の同級生一人に対して四つのキャラ(幼少期、現在、将来、独り言に勝手に現れ出てくる像)を設定できてしまいます。独り言を対話として活用する時にどのキャラの同級生を登場させるかという選択肢の幅が広がってきます。
今のところ独り言内に現れ出る他者を四つに分けてみようとしていますが、何も四つだけでなくてもっと多くても良いです。もっと時間軸を細かく区切って、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、そして教育機関を終了した後の姿などを多彩に想像してみるのも面白いと思います。
とりあえず、ここでは独り言に出てくる他者、親類や学校の先生や近隣住民、または頻繁に通うコンビニの店員などに関して四つのキャラクターに分けてみます。この時、他者との関係の緊密さによってキャラを想像する方法が異なってきます。よく子どものころに会っていた親戚の人だと、ある程度その人がどんな人物であるか分かっていますが、コンビニの店員になると、何か気になっていても、話したこともない、どういう人か全く知らないことが多いと思います。この親戚とコンビニ店員の過去、現在、将来の像をイメージするとなると、実際に試してみるとよく分かりますが、想像の仕方が全く違ってきます。
独り言内の他者として近しき関係の人ばかりにスポットを当ててキャラ化するだけでなくて、さっと独り言内を過ぎ去ってしまうような他者も像として肉付けしてみます。そうすることでキャラ化の想像の過程にもバリエーションが出て、より楽しくなってきます。そうすると、自ずと敵役、悪役、脇役の数も増えてきますので、対話としての独り言が賑やかなものになってきます。対話としての独り言が、寂しく悲しいものであるならば、普通にいつも通りに一人で無意識的な独り言を発していたほうがマシかもしれません。せっかく対話として独り言を利用してみるのですから、派手に賑やかに少し騒々しいぐらい数多くの他者を登場させてみます。
メディア上の人物に対する独り言 敵役、悪役、脇役
メディア上の人物が独り言内の他者として現われ出ることもあるかもしれません。テレビ、映画、ネット動画などに登場する実際に会ったことはないが、実在している人たち。メディア上の人物と自分の関りを考えてみるのは、それ自体とても興味深いことだと思います。確実に実在する人物であるはずですが、自分の目でその存在を確かめたことはないという何だかよく分からない感覚になってきます。しかも、一方に何らかの役を演じているメディア上の人物たちがいて、他方にその演者を部屋でネットやテレビで眺めている演じていないと思われる素の自分がいます。その演技と素が出会う場としてメディアを考えると、単に部屋の中でテレビを眺めているだけの行為もいつもとは違ったものになってきそうです。
そのある意味、不思議なバーチャル的存在であるメディア上の人たちが独り言内の他者として現れてくるなら、さらに面白いと思います。また、メディア上の確かに実在するであろう人物だけでなくて、完全にバーチャルなアニメやゲームのキャラクターも独り言内に登場するかもしれません。そうなると、確実に実在しないと分かっているが実際に存在しているかのように感じるアニメキャラやゲームキャラということで、メディ上の人たちとはまた違った関係を独り言の中で築くことになってきます。その差も面白いはずです。
そういうメディアを通じて出会う人やキャラクターに対する独り言は、政治的な憤慨をある政治家にぶつけるというような怒りの独り言、ある芸能人に憧れる熱狂的な独り言、あるいは、映画の主人公の幸せを我がごとのように喜ぶ幸福の独り言、または、あるアニメキャラの不運を嘆く悲しみの独り言など彩り豊かなものになるはずです。直に接したことがある親や学校の先生や同級生などとはかなり違った現われ方をメディア上の人物やキャラクターはしてくるだろうと思います。それも楽しみの一つだと感じています。そのような少し不思議なメディア上の人物やキャラクターを対話としての独り言の対象者として肉付けしていきます。
もうすでに半ばバーチャルなキャラクターではありますが、そういう人物たちがどうしてメディア上でそのような発言をしているのか、また、なぜそのような振る舞いをしているのかというような背景も考えながら、自分なりにキャラ化してみます。そういう対話としての独り言の新たなキャラを獲得するという気持ちでメディアに接してみると、今までとは違った視点でメディ上の人物たちを見るようになってきます。メディアへの接し方が変わることで予想外の発見があるかもしれません。
また、SNS上の名前も顔も知らない匿名の人物を独り言内の対話の他者として想像してみるのも良いかもしれません。テレビや動画などに出てくるメディア上の人物だと顔や話し方や服装など演じられたものであるかもしれませんが多くの情報を得ることができます。しかし、SNS上の匿名の人物の場合、かなり情報が限定されてくるだろうと思います。極端な場合は、投稿されている文章だけしかその人物について知らないということもあるだろうと思います。ただ、そのように情報が限られている分、それだけ好き勝手に想像してイメージを作り上げることができるということでもあります。SNS上の投稿だけから、ある人物像を形作ってみるのもまた面白い行為です。
しかも、そうして自分で作り上げた他者と独り言内で対話を試みてみます。この人物はどういうことを言いそうかと考えながら独り言内で話してみますから、もし何か今、話題になっている時事問題などを独り言内でその人と話してみて、そして、実際にその人物がどんなことをその話題についてメディア上で発言するか確認することもできます。それは、何だか答え合わせのようで面白いと思います。もし独り言内での発言と実際のそれとが似ていれば、嬉しく感じるかもしれません。もし仮に一致していたら、その人物の思考や感情のベースとなる、ある一部分を自分は共有できているようにも思えるかもしれません。
また、メディア上の人物を自分なりにキャラ化することで、対話としての独り言において飛び道具的な役割を果たす突飛な登場人物を得ることができます。大物政治家が自分の独り言に登場するというのは奇想天外で面白そうですし、あくの強い映画の悪役がそのまま自分の独り言内でも悪党として暴れまわるのも先が読めなくて楽しそうです。さらに、違う世界観を生きているアニメやゲームのキャラクターが、一つの同じ独り言上に登場する可笑しみもあります。かなりごちゃごちゃした感じになるかもしれませんが、いつも部屋で一人で独り言をつぶやいているのですから、そういう独り言の利用法もありだと思います。このメディア上の人物やキャラクターもできる限り多く自分なりに他者像としてイメージを固めて対話としての独り言の登場人物としてストックしておきます。
メディアに接する時もこの人物は自分の独り言のキャラとして有りか無しかという視点を持っているとコンテンツを消費するだけでなくて自分なりの楽しさがあります。だから、もし面白くないと感じる番組や映画やアニメであっても、自分なりの楽しみがほかにありますから、十分に興味を持って観られます。むしろ、そういう自分の興味を引かない、普段ならすぐにチャンネルを変えてしまうようなものにこそ、自分の独り言に是非とも欲しい人物が出ているかもしれません。実際に接する、または接したことがある人だけではどうしても限界がありますので、半ばバーチャルなメディア上の人物たちにも対話としての独り言に参加してもらうのが良いと考えています。
自然物に対する独り言 見つめる存在、見守り役、監視役
今度は自然物に目を向けて、独り言が発生する場の背景にスポットを当ててみます。独り言をつぶやいている場面には当然、自然物が存在していると思います。その当たり前のようにそこにある自然を対話としての独り言の中に意識的に組み込んでしまいます。自然がそこにあると感じるだけでなくて、独り言の対象にもしてみます。
空、雲、太陽、風、嵐、雨、雹、土、岩石、火、海、河などを独り言の対話相手にします。独り言内でこれら自然物と会話らしきものをすでにしているのであれば、そのイメージを広げていけば良いと思います。しかし、そうではなくて、まったく意識もしていない空気のような存在であるのならば、先ずは独り言の背景として感じてみます。たとえば親が登場する独り言で、会話が繰り広げられている場所に注意を向けて、その場の光、風、気温、空模様などを知覚してみます。その場にあるあらゆる自然物を感じてみようとします。
そして、その行為を何度か繰り返してみて、どんなタイプの独り言であってもその場に存在する自然物を意識できるようになれば、今度はその自然に独り言内で話しかけてみます。対話としての独り言の新たな登場人物にするべく働きかけます。自然とひとまとめにはせず、風なら風に独り言をつぶやきます。無理に風からの受け答えを捻り出して独り言内対話を発生させる必要もないとは思います。ただ、風、空、雲、光と対象を定めて独り言を発していきます。
強引に自然からの受け答えを捻り出さないようにするのは、これら自然物は対話としての独り言内で見つめる存在というキャラクターにしたいからです。遠くから対話としての独り言を見つめてくれる存在です。この存在により、ぐっと独り言内対話の場が生き生きとしてくるはずです。
また、見つめる存在ということで監視役のようなキャラクターにも自然物はなるだろうと考えています。独り言内対話を見守っているようで、実は監視しているというキャラ設定もできるはずです。そうすることで対話としての独り言内における自然物キャラクターのバリエーションも豊富になってきます。空がその場を見つめているとして、見守り役としては穏やかな晴れ空、監視役としては吹雪、などと決めていくと面白いだろうと思います。
でも、もし普段から実際に自然物と対話をしているのであれば、自然も独り言内の会話相手に当然なり得ます。自然物を独り言内で見つめる存在ではなくて、是非とも対話の他者として登場させたいのであれば、普段から実際に自然に話しかけているようにしてみます。風や光や雲などに常日頃から言葉をかけてように独り言内でも話しかけて自然物を独り言内対話の話し相手にしてみます。
見つめる存在、見守り役、監視役、はたまた対話の相手として自然物をはっきりと捉えるためには擬人化も一つの手です。人格を持ったキャラクターとして丁寧に自然物を描き出していきます。イラストを描いたり、声質や癖や趣味を考えたり、性格や気性を想像してみたり、名前を付けてみたりしてキャラ作りをしていきます。
対話としての独り言内では、主に自然物は見つめる存在というその場の背景のような役割を担うことを想定していますが、キャラ作りをしていく中ではっきりとその像を思い描けるようなら主人公に次ぐサブキャラにしても面白いです。味方や仲間、あるいは悪役や敵役が自然というのも興味深い独り言内対話の形だと思います。
自然物のキャラクターも多ければ多いほど楽しいですから、できる限り作り上げていきます。また、風と光というように二つ、またはそれ以上の要素を組み合わせたキャラクターを作ってみるのも面白いです。そうなってくると、自然物同士の関係図を作成することへと興味が広がっていくかもしれません。自然物の自分なりの相関図を築いてみれば、そこからまた新たな発見があるだろうと思います。
自然という身の回りに常に存在しているものを参照できるわけですから、キャラ作りが上手くいかないときは実際に自然に触れてみるのが良いと思います。また、自然に関する情報や知識を本やネットなどで入手してみるのもキャラクター作成に役立ちます。
なぜ夕日は赤く見えるのか、どのような仕組みで雨が降るのか、光によってどのように物の色が変わるのか、などという疑問に対する科学的な答えを探してみると、今までとまた違った視点で自然物を見つめるようになるだろうと思います。知識によって全く同じ物が異なって見える感覚それ自体も面白いですし、それがキャラ作りにも反映されてきます。
ですから、全く何の知識も入れずにとりあえず何か自然物をはっきりと自分なりにキャラクター化し、その次にその自然物に関する知識や情報を自分の中に取り入れてみるのが良いと思います。知識を得た自分の目に、何の情報も無しで描いた自然物キャラがどう映るか見てみます。目の前に存在する自然物は全く同じなのに、ただ自分の知識量が増えただけで違って見えてしまう不思議さをキャラ作りにも是非とも取り入れてみます。
そうすることで、自然物キャラのバリエーションが増えるだけでなく、キャラクターに深みが出てくるのではないかと考えています。見つめる存在、見守り役、監視役というその場の背景的な役割であってもしっかりと肉付けしておけば、独り言内対話がより生き生きとしてきます。舞台背景がしっかりとしていないとその場で繰り広げられる対話も本当に絵空事に思えてきます。だから、自然物キャラクターもちゃんと作り上げてみます。
動植物に対する独り言 そこに存在する生き物、脇役
次は動植物を対象とする独り言を見てみます。動植物を独り言内対話の相手にしてみるというのは、自然物よりは容易ではないかと考えています。動植物は、実際にこちらのアクションに対して何らかの反応を示してくれますので、言葉ではありませんがすでに対話のようなものをしている感じがあります。犬や猫を撫でると、その行為に対してむこうは体や鳴き声を使って何か答えてくれます。それは犬や猫と自分との間で何かを交わしていることになります。何か関係がその時に発生しています。その感覚を広げていって、対話としての独り言内の登場人物になるようにイメージを固めてみます。
犬、猫、鳥、虫、植物、野菜など動植物のキャラクター化にトライしてみます。独り言内対話の場に存在する生き物、脇役としてイメージを形作ってみます。イラスト化や名前付けなどをしてはっきりとした輪郭がある存在になるようにしてみます。実際の動物の動作や鳴き声、植物の生え方や芽の出方に注意を向けて対話としての独り言の相手役としてどのようなキャラクターにすべきか考えてみます。
実際に接してみるとイメージ作りの助けになりますが、犬や猫など動物を飼うのは難しいこともあると思います。でも、昆虫なら育てられるのではないかと思います。幼虫から成虫になるまでの過程を餌をあげながら見守るのはとても興味深いことです。蛹の段階の昆虫は中でどういう状態なのでしょうか。あの中では何が生じているのでしょうか。なぜ成虫前に蛹になる必要があるのでしょうか。その変態を目撃するだけでも不思議な感覚に襲われますが、蛹に関する知識や情報を本やネットで得ることでさらにまた違った目で昆虫を観察することができてきます。幼虫から成虫になるまでの過程を共にすることで、自分の中で昆虫のイメージが形成されてくるはずです。その像をもとに独り言内対話の対象として昆虫も登場させられるようにしてみます。
もし昆虫を育てるのも難しいようなら、花や野菜を植木鉢で育ててみれば良いのではないかと思います。大きなスペースも必要ありませんし、基本的に水をあげれば良いだけですし、気軽にトライできます。種を植えて、毎日、水を遣って少しずつ成長していくさまを眺めてみます。水を遣るというこちらの行為に植物がどう答えてくれるか観察します。それ自体が言葉を交わさない対話のようになっているかと思いますが、その体験をキャラクター作りに活かしてみます。種から育てて花が見事に咲いたらどんな感情が自分の中に沸き起こるか想像しながら栽培してみるのも楽しいだろうと思います。また、一つだけでなくて沢山の花や野菜を植えてみるのも、植物同士の関りも観察できて興味深いです。そこには、当然、植物だけでなくて、昆虫、微生物など無数の生き物が関わっていますので、その循環サイクルを感じながら植物を育てれば、更なる広がりがあります。無限のような関りをそこに見出すことができるかもしれません。
また、図鑑やネットなどで未知の動植物を探してみて、気に入ったものを独り言内対話のキャラクターとして登場させるべく生態を調べてみても良いと思います。深海の生き物などの生態はいまだに分かっていないことがたくさんあるようですから、想像しながら自分なりのイメージを膨らませていくことができます。もうすでにこの世にいない絶滅種もしっかりとイメージして肉付けできるなら対話としての独り言の登場キャラになれると思います。その時に、対象となる一匹の動物ならその動物だけでなくて、その種が存在していたであろう環境も想像するとぐっとキャラクターに深みが出てくるのではないかと思います。この世に実在していたのに、もうすでにこの世のどこにもいない存在に思いを馳せることは、それだけで妙な感覚になってきますが、そういう登場キャラクターが独り言内対話の中にいることは幾重にも折り重なる多層性を感じさせてくれると思います。
さらに、架空の動植物を作り出してしまうこともできます。自分が思うように自由に独り言内対話の対象として欲する動物や植物を考え出す行為は、それ自体で楽しいものです。そうなってくると、無限にキャラクター化できる対象があることになり、キャラクター作りに忙しくて日々の悩みや不安に費やしている時間が惜しくなってくるかもしれません。
このような作業を行なっていくことで、実際の花の色や虫の羽ばたきや動物の鳴き声が今までとは違ったように見え聞こえてくるようになるだろうと思います。今まで見えなかった色や音や動きを感じられるようになれば、独り言内対話の対象キャラ作りにさらに別の楽しみも加わり、面白さも増していくだろうと考えています。動植物に関しても独り言内対話の対象としてバリエーションをどんどんと増やしていきます。独り言内対話の対象を人だけに限定しまうと、とても窮屈なものになってしまう危険性がありますので、人以外の生き物もそこに存在していると感じて意識することでもっと独り言内対話が豊かなものになっていくと思います。
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